作曲・音楽制作を依頼する際に気を付けておきたいこと~必要なのは国語力と敬意です~

こんにちは、チェロ奏者・作曲家のヌビアです。

 

フリーランスになってから、ここ最近は仕事でのトラブルは減っていたのですが

先日久しぶりに「なかなかな」お客様に遭遇しました。

 

今回はこの騒動について、実際のやり取りを例に出しながら

楽曲の制作・演奏などを依頼する際に、最低限注意しておきたい点をまとめていきます。

 

そして今回の内容は、イラスト制作・文章執筆などをお願いする際などにもあてはまることが多いので

ぜひ最後まで読んでいただければと思います。

実際に起きたトラブル

まずは、僕にアメリカから作曲をご依頼されたお客様との実際のやり取りの一部

分かりやすく日本語訳しながらご覧頂きたいと思います。出来る限り忠実な和訳を心がけています。

 

また、日本人とのメールではありませんので、やりとりが少しカジュアルに聞こえるかもしれませんが

そこは個人的にはまったく問題ありませんのでご了承ください。

 

『はじめまして、作曲の依頼を検討しているのですが。』
ヌビア
「ご連絡頂きありがとうございます!

まずはどのような曲をご希望なのかをお伺いしたいのですがよろしいでしょうか?」

『(サンプルを渡されて)このようなテイストの曲が欲しいなと思っています。』
「わかりました!そうしましたら、曲の尺と、ご希望の楽器編成などがあればお知らせください!」
『楽器編成は~~~でお願いします』
「(いっぺんに答えてほしいなあ……)

曲の尺についてはいかがでしょうか?」

『1分で。』
「お知らせ頂きありがとうございます!

(色々支払いの手続きをして)それでは作業に入らせて頂きます」


 

(確認などを含めて2週間後)

 

『お待たせ致しました!こちらがご依頼頂きました楽曲のデータになります。

お手隙の際にご確認くださいませ、お気に召せば幸いです!』

「いい感じですが、少しテンポを変えてほしいです」
『分かりました、ちなみに速くするのでしょうか?それとも遅くするのでしょうか?』
「速くして下さい」
『承知しました!すぐに修正したデータをお送りします』

 

(翌日)

 

『お待たせしました、こちらでいかがでしょうか?』
「あー、テンポじゃないかもですね。たぶん他の何かです。よろしくお願いします。」
『ご確認ありがとうございます!

……えーーっと、他の、といいますと?』

「なんて言ったらいいのか分からないのですが、最初の方にある「落ちる音」のことです。

(※原文表記:Repeating drop sound)」

『申し訳ありません、「落ちる音」というのが分からないので、

該当箇所の秒数をお知らせ頂けますでしょうか?』

「最初の音です」
『すみません、最初の音とはどういう意味でしょうか……?

私には「落ちる音」というのを作った覚えがなく、「落ちる」の定義をお伺いしたいです。

難しければ、どの楽器のことかお知らせください。

メロディーでしょうか、ドラム、ベースでしょうか?』

「分かりません、最初の音です。」

 

(※ご依頼が割とシンプルなポップスなので、最初の部分の楽器編成は

メロディー、ドラム、伴奏のキーボードしかなかった。)

 

(うーーーん、これは堂々巡りだし、疲れるなあ……伴奏のシンセサイザーの音かな?

とりあえずもう1度修正してお送りしよう。)

 

伴奏のシンセサイザーの音を修正して再度お届けしますと伝え……

 

『お待たせ致しました!こちらでいかがでしょうか?ご確認を宜しくお願い致します。

(修正2回まで無料のため)ご存知の通り、以降の修正は追加料金を御請求しますのでご承知おき下さいませ。』

「キャンセルします。すみません。」
『!?!?』

 

『……お言葉ですが、私は何度も楽曲についてどこを修正すればいいのかお尋ねしましたし

お世辞にも指示が分かりやすい状況だったとは言えないかと思います。

私の制作体制について非があるのであれば、キャンセルはもちろん承諾しますが、

今回に関してはキャンセルによる全額返金は承服致しかねます。

「そのようにいわれましても、これ以上の説明は難しいです。」

 

((一度冷静になりつつ)僕の聞き方が悪かったかもしれないな)

 

『……わかりました、そうしましたら楽曲の楽器ごとのデータをすべてお送りしますので

「落ちる音」というのがどの楽器に含まれているのか、再度お教え頂いてもよろしいでしょうか?

もしそれが明確になれば、今回はもう1度無料で修正をお引き受けします。』

 

(データ送付後)

 

「わかりました。~~~の楽器です。」

 

(……わからん!!!何が「落ちてる」んだ!!?

音程か!?ちょっとグライドしてるこの音色のことか!?

また細かく聞くのも面倒だから、冒頭だけちょちょっと直して確認してみるか)

 

『(調整して)少々変更致しました、こちらの音色ですといかがでしょうか?

こちらは修正には含まれません。』

「え、同じじゃないですか?」

 

(変えたわ!!!!!!!!!)

 

『いえ、シンセサイザーの音程の移り変わりが落ちて聴こえるのかと思い、

グライドをさせないように変更しました。

恐れ入りますが、改めて「落ちる音」というのはどのような意味なのかご説明頂けますか?』

「今送ってもらった、「そんな感じのフレーズ」のことかな、と思います。

(※恐らく送った冒頭のシンセサイザーのフレーズ)」

『えっと、そんな感じのフレーズ、をどう変更すればいいのでしょうか。

お願いですので出来る限り分かりやすくご説明をお願い致します』

ちょっと何言ってるのかわかんないです

(※原文:I don’t understand your question)」

 

(サ●ドイッチマンか!!!)

 

『……再度お伺いしますが、どのような意味でしょうか。

どのように修正すればいいのか、ご指示をお願い致します。』

「あ、じゃあ全部変えちゃってください。」
『!?!?!?』
『ええっと……全部変えるとは、どのような変更でしょうか。

音の並びを変えるのでしょうか、音色も変更するのでしょうか』

「全部ですね。」

 

(5分後)

 

『キャンセルします』
「!?!?!?!?!?」

 

……こうして一方的にキャンセルをされ、この方と連絡は取れなくなりました。

現在は、海外とのお仕事を繋いでくれている仲介業者に申し立てを行っています。

 

曲を作っていた時間、無駄の多いやりとりをした時間、精神の摩耗……

色々なモノを消費してしまいました。

リテイクさせないつもりで詳細に

ここまでのやり取りをご覧になっていかがでしたでしょうか。

僕もさすがに最初はイライラしていたのですが、和訳をしながらむしろだんだん笑えてきました。

 

怒ってもエネルギーの無駄なので、これもブログのネタにしてしまおうと、こうして記事を書いています。

 


 

さて、ここまでひどいものは久しぶりですが、

まずご依頼の際に気を付けて頂きたいのは「リテイクをさせない」つもりでいることです。

 

僕もイラストレーターさんや楽器奏者さん、デザイナーさんに外注することは多いですが

基本的にリテイクは絶対にさせないつもりで指示をします。

 

 

たとえば、絶対的に信用していて、もう慣れた相手であれば「任せるわ~」と雑になったりもします。

逆に専門外の楽器で「ソロはお任せで」などと指示する場合には、基本録り直しはさせません。

 

なぜなら、きちんとしたアーティストさんの場合、

収録現場での録り直しでない限り「最初の完成データ」がベストだからです。

 

相手はプロです、依頼側よりもはるかに多くの知識と経験を備えています。

プロは自分の技術と提供するサービスに誇りを持っていますから、1発でベストなものを出せるようにエネルギーを注ぎます。

 

リテイクをする、ということはそれを「否定する」ことだと思います。

それは、想像以上に、大変に重い言葉なのです。

 

ですので、依頼する側は「1発でベストを出せる」ように

出来る限り事前にリクエストを細かく伝える必要があります。

 


 

もちろん細かい部分、例えば「0:42秒の部分を少し音量大きくしてほしい」「キャラのイラストにイヤリングを付けて下さい」

などの小さい部分は、完成形を見てからわかる部分もあるので、まったく問題ないです。

 

 

ですが「あ、全部録り直しで」「やっぱ顔の向き変えて下さい」などは

「それは事前に言ってくれ」ということになります。

 

 

さらに「全部やり直し」というリクエストは、いわば「選ぶ相手を間違えている」という意味にも取れます。

任せた挙句、やり直しするのならば「なぜ自分を選んだ?」となるわけです。

最初に送られてきたものが気に入らなければ、それはその人を選んだあなたの責任でもあります。

 

 

たとえば、ヒャダインさんに「澤野弘之さんのような曲を書いて下さい」とお願いしますか?

それでまったく期待と違う曲が出てきたら怒りますか?

 

作品の仕上がりは、依頼されたクリエイターはもちろん、任せるあなたの責任でもあります。

最高の仕上がりにするためにも、「リテイクはない」つもりで自分の要望を伝えましょう。

必要なのは国語力&敬意

良い作品を仕上げるために、丁寧なリクエストを心がけましょう。

まず必要なのは相手に伝える国語力です。ここでは音楽についての依頼に限って見ていきます。

 

最低限のあいさつと共に

必要なことをシンプルに、箇条書きで伝えると好感を持たれます。

 

【作曲の場合】

・目的は?
→BGMなのか、オリジナルの歌唱曲なのか、CMの曲なのか……

・尺は?
→ざっくり3~4分、きっちり30秒、などなど……

・想定する仕上がりのイメージは?
→似ている曲のYouTubeのリンクを複数送るとベスト

・予算は?
→正直に伝えましょう(次の章で解説)

・納期は?
→できるだけ余裕をもって依頼しましょう

・その他
→使って欲しい楽器、生演奏を入れるか、楽譜……etc.

【楽器演奏の場合】

・目的は?
→スタジオで収録?宅録?ステージでの生演奏?

・予算は?
→正直に伝えましょう(次の章で解説)

・楽譜データ
→分かりやすい楽譜データを用意しましょう(別記事で解説)

・その他
→ステージ演奏の尺、規模感、多重録音かどうか……etc.

 


 

(例)

突然のご連絡失礼致します、○○と申します。

本日は楽曲制作依頼について相談したく、ご連絡させて頂きました。

 

・現在、弊サークルでは「~~」という2Dアクションゲームを製作しており

主にそのメニュー画面・告知動画で流すメインテーマ楽曲をご依頼させて頂きたいです。

 

楽曲の尺は2分ほど、ループができる仕様でお願い致します。

楽曲のイメージとなる参考曲のリンクを2つ、以下に記載致します。

 

・私どもの予算が限られておりまして、(必要となれば収録代などを含め)

5~7万円という予算の範囲でお願いさせて頂けないでしょうか。

 

納期は3ヶ月後の10月末前後を希望しております。

 

以上、お手隙の際にお目通しいただき、お引き受け頂くことは可能かどうかご連絡頂ければ幸いです。

もし可能であれば、追ってぜひ作品や楽曲の詳細についてご相談させて頂きたく存じます。

何卒宜しくお願い致します。

 

値段・見積もりはためらわず聞く

ここは一番大切な点ですが、

予算については誤魔化さず、できれば1番最初のメールで相談しましょう。

 

トラブルの7~8割は、値段・予算・支払いについてで発生します。

 

「聞いていた値段と違った」「支払いがない」……

これについては、もちろんクリエイター側に非がある事例も多々ありますが、依頼側も十分に気を配らなければなりません。

お金というのは、依頼側とクリエイターを繋ぐ、一番最初の信頼関係です。

値切りしない、安くしたいなら要求を減らす

そして、基本的にはクリエイター側の提示した値段から値切りをしないようにしましょう。

芸術・アートというのは確かに値段がつけにくく、「高い!」と思われてしまうこともあるでしょう。

 

しかしその値段の裏には、想像もできないほどの努力と、技術を身に着けるまでにかかったお金・時間

様々な要素が隠れていることを忘れてはならないのです。

 

もしどうしても予算が足りない時は、「宅録で」「1パートまで」「納期を遅くする」など

その分リクエストする内容を自分が削るような提案をしましょう。

「丸投げします」は一番ダメ

例えば楽器演奏において「ソロはお任せします」というのは分かるのですが

「明るい感じの曲で、あとは何でもいいです」などというリクエストは絶対にやめましょう。

 

捉えられる範囲が広いほど、自分の欲しいものと作られたものがかみ合わない可能性がありますし

一番最初にご紹介したような、あんなトラブルを招くことにもなります。

 

自分のリクエストを削ろう、という話をしましたがそれは丸投げとは異なります。

相手が作りやすいようにきちんと指示をしつつ、余分な要求を削っていき負担を軽くする、という意味です。

さいごに

今回は実際に自分が経験した事例をもとにご案内してきましたが

(ここまでひどいものは少ないものの)やりとりしずらいお客さんはかなりの数いらっしゃいます

 

その理由として、やはりどう依頼したらいいか分からない・お金のことを聞いていいのか……

など依頼者側に様々な不安があることも大きな理由ではないかと思います。

 

この記事で少しでも、依頼の時の流れが分かりやすくなればなと思っています。

 

そして、もし楽曲制作の依頼があればこちらも覗いてみて下さいね。

お問い合わせは先ほどの文面をコピペして、書き換えて使ってみてください。それでは。

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