こんにちは、チェロ奏者のヌビアです。
先日、『チェロを弾くときに、弓がまっすぐならない』というお悩みを持つ生徒さんが
「弓をまっすぐさせるための矯正器具」を購入検討していらっしゃったので、
プロ奏者であり、チェロ講師である私が実際に使用してみた感想をお伝えしたいと思います。
こちら、HorACE(ホーレス)というメーカーの
『HorACE Bow Guide』という製品になります。
商品概要
こちらが実際にチェロに装着してみたときの写真です。
この製品は写真のように、チェロの側面で挟み込み、弦の上を覆うように取り付けます。
そして透明なプラスチックの2つのプレートの間に弓を入れて弾く、
というのが使用方法になります。
挟み込む側面の部分はやわらかいプラスチックでできており、
チェロ本体を傷つける心配はありません。
取り付けも大きな力は必要なく、これなら女性や子供でも自力で取り付けることができると思いました。
使用感
取り付けまではとてもスムーズだったので、実際に弓を入れて弾いてみました。
そこで感じたこととしては、ざっくりと以下の通りです。
【メリット】
・強制的に弓がまっすぐになる
→ある程度腕や手首の感覚をつかむことはできる
・特に弓の真ん中~先端を使う時の理解に役立つ
【デメリット】
・まっすぐに「しか」ならない
→弓を上下させたり、柔軟な手首の感覚を理解することはできない
・弓の根元部分については、間違ったクセがついてしまうかもしれない
・演奏の際には使わないほうがいい
→弓の位置の確認のためにだけ使う、演奏の際には外す
メリットについて
初心者の方は特に、弓をまっすぐ保つのに苦労することが多いと思います。
特に、弓の先端に行けば行くほど、弓をまっすぐ保つのは難しくなるでしょう。
それは手首やヒジの使い方が間違ってしまうから、というのが主な原因なのですが
この器具を使うことで、その感覚がある程度理解しやすくなるかなと思いました。
先生が目の前にいれば、先生が直接弓や体の使い方を教えたり、直したりできますが
家でそれを同じように復習するのは難しいです。それをサポートするものとしては良い製品と言えるでしょう。
家での部分的な復習用、演奏時ではなく弓の動きだけを確認する時
これらのタイミングで使うととても有用です。
気を付けたいこと
これは重要なのでぜひ知っていただきたいのですが
チェロの弓は「完全にまっすぐに保つものではない」ということです
弓の根元では、手首を少しS字型に内側に入れてあげるとか、
先端に行く時は少し奥へ手首を伸ばしてあげるなど、
実際の弓の動きは「少しずつ曲がりながら往復するもの」で、
一見まっすぐな弓の動きは「結果的にまっすぐになっている」に過ぎないのです
実際の演奏時に、弦の上で同じ場所で弓が往復していても、弓の動きは曲がっていたりします。
そのための体の使い方はこの器具で身に着けられず、変なクセがついてしまう危険性もあります。
開放弦を弾くのに使用して、感覚をつかむための器具としては良いかもしれません。
また、時間はかかりますが、「レッスンを受け→そのたびに修正されて→家で復習する」という
練習の過程を経るのが、結局効率が良いのかなとも感じました。
さらに、チェロの学習が進むと「音の強弱」を表現するために
チェロの弓の位置を上下にコントロールするための練習が必要になります。
……こうなると、いよいよこの器具は使えなくなってしまいます。
チェロの弓は、演奏する位置(上下)によって音の大きさが変わりますね! ですがそれ以外にも弓の位置には重要な役割があります。 https://www.youtube.com/watch?v=D9Dc4RUIxa[…]
まとめ
結論としてこちらの『HorACE Bow Guide』ですが、
使い方によって便利にも、また間違ったものにもなり得るのでもう1度まとめます。
・弓の真ん中~先端部分について、感覚をつかむのに役立つ
・製品としての不具合はなく、器具そのものは使いやすい
もしご購入を検討される際はぜひ参考にしてみて下さい、
そして合わせて、僕がオススメの補助器具のリンクも紹介しておきます。それでは。
僕のチェロ教室では対面レッスン・オンラインレッスンや、出張レッスンを行っているので、
その様子を覗いてみて下さい。レッスン風景の動画などもここにあります。