こんにちは、チェロ奏者のヌビアです。
これまで国内外で数えきれないほどの舞台を経験してきました。
その中で一番演奏のクオリティーを左右するのは
早弾き等の超絶技巧ではなく、長く伸ばす音。つまりレガートだと思っています。
・単調になりやすい
・技術の差がはっきりしてしまう
ここについては率直な話、個別のレッスンを受けるのが近道ですよ
……と言いたいのですが、自宅学習用などにも役立てて頂ければと思い
この記事を書いている、という感じです。
※今回の解説は、「レガートを美しく弾くコツ(基礎編)」をクリアした人向けの応用編になっています。
初心者の方でつまづいている方は、まずはそちらの記事を参考にしてみてください。
前に「美しいスタッカートを弾くコツ」という記事を書いたのですが、 正直なことを言うと、一定のラインを超えるとスタッカートって誰が弾いてても一般の耳には綺麗に聞こえるようになるんですよね。 ヨーヨーマだろうと、[…]
レガート技術の応用編
尻上がりにならない
レガートで1番音が乱れたり、耳障りが悪くなってしまう要因は
「伸ばす音の最後が『尻上がり』になる」、つまり「最後の音量が大きくなる」ことです。
これはチェロだからこそ発生しやすい悩みでもあります。
そして、弾いている本人は尻上がりになっていることに気付かないことも多いです。
チェロを弾くときには「アップ弓」「ダウン弓」を繰り返しますが
てこの原理で考えれば、当然、手元のほうが力が入りやすいです。
→手元になるにしたがって加速する
→音が尻上がりになる
そうなると、本人はいたって「まったく同じ力」でアップダウンをしているつもりにもかかわらず
気付かないうちに尻上がりになってしまうわけですね。
この尻上がりの音、実感は湧きにくいかもしれませんが、
非常に不快な印象・違和感を聞いている人に与えてしまうんですね。
試しに「こんにちは」という言葉を「は」にアクセントを置いてしゃべってみて下さい。
おすすめの練習法は一度自分の演奏を録音してみること。
手ごろな価格のもので構いませんので、小型の録音プレーヤーを使うクセをつけるといいです。
その場でサッとイヤホンで聞けたりするものだとなおGood。以下にオススメを載せます。
ビブラートの緩急
終わりの音を丁寧に作りこむ作業ができたら、
あとは「伸ばしている間の音」をいかに聞かせるかです。
「終わりよければすべてよし」とは言いますが、
キレイな終わりが作れても、そこに至るまでが単調だとロボットのような音になります。
それを回避するための手段の1つに「ビブラート」があるのですが
それも「単調なビブラート」だと下手なアマチュアシンガーみたいになってしまいます。
気を付けるべき点は以下の2点です。
・ビブラートの幅
ビブラートの速度
まずはビブラートで指を揺らす速度を変化させてみましょう。
定番としては、最初はゆっくり→だんだん早くして→減速(音の最後に気を付けつつ)
このようにビブラートすると、
音に広がりが出て、かつ余韻のある音に仕上がりますので1度試してみて下さい。
ビブラートの幅
さらに、速度に連動して指を揺らす幅も変えていくと音に奥行きが生まれます。
先ほどの例に従うと
・幅 最初は小さく→だんだん大きく→小さく戻す
基本的に「速度」と「幅」は連動する要素ですので
加速に従って、幅も調整するように心がけてみて下さい。
レガートを弾く際の心構え
一般のお客さんでも、レガートだけは誤魔化せない
ここでの一般のお客さん、とは「楽器経験など一切ない人」のことを指します。
このような人でも、レガートについては「あれ?なんかおかしいな」という印象を持たれてしまいます。
「おかしいな」とはならなくても
「あんまり上手じゃないな」という風には、確実に印象を与えます。
多少間違えていても「すげーーー!」という風になるものです。
かつてイギリスで演奏会をした際に、
高難易度の楽曲の途中を丸々すっ飛ばし、頭が真っ白になって適当な音を弾いた、という経験がありますが
後で自称「クラシックにうるさい」おじさんに聞いたところ
「大変すばらしい」という回答を頂き、「助かった……」と安どしたものです。
1曲、1フレーズ、1小節、1音と意識を細かくする
最初は1曲を弾くだけで相当な労力だと思います
ですがもしそれが出来たら、どんどん意識する範囲を狭めていきましょう。
逆に最初から「ビブラートの速度を……」という意識をするのはやめましょう。
そうすると、最初から考える情報量が増えすぎて、頭も体も追いつきいません。
レガートを意識するためには、まずは大きな目線で正しく弾けるかを意識して、
徐々に徐々に、1音を作り上げていく、という考え方が必要になってきます。
終わりダメなら、すべてダメ。
さて、文章の途中で「『終わりよければすべてよし』とは言いますが……」
とは言いましたが、最終的には格言の通りになります。
これは、終わりをきれいに作れればそれでいい、というよりは
どんなに丁寧なビブラートをしても、尻上がりの音になるとすべてがパーになる、という意味です。
よければこちらで、レッスンの雰囲気をのぞいてみて下さい。